奈良の世界遺産とは
奈良には数多くの遺跡があり国宝や重要文化財も少なくありません。そして、驚くべきことに、ひとつの町に「古都奈良の文化財」として8つの資産が「世界遺産」として登録されているのです。さらには、それぞれが単独での世界遺産登録ではなく、8つの資産全体が「ひとつの文化遺産」として登録されており、つまりは「奈良市の町全体」が世界遺産としての価値を有していると言えるでしょう。
ともあれ、その8つをここで列挙してみましょう。
東大寺 興福寺 春日大社 元興寺 薬師寺 唐招提寺 平城宮跡 春日山原始林
さらに奈良県の世界遺産ということであれば奈良県生駒郡斑鳩町にある法隆寺、奈良県吉野郡にある吉野山(「紀伊山地の霊場と参詣道」)があります。法隆寺の西院伽藍は現存する世界最古の木造建築物群であり、吉野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」は古都・奈良の信仰の対象でした。奈良市の世界遺産「古都奈良の文化財」を観たならば、こちらも是非、足を伸ばしておきたいスポット&エリアです。
奈良市の世界遺産マップ
それでは、その8つ「東大寺 興福寺 春日大社 元興寺 薬師寺 唐招提寺 平城宮跡 春日山原始林」がどのように配置しているかですが、これがなかなかコンパクトにまとまっています。奈良市観光協会のサイトでフリーダウンロードできるガイドマップ(パンフレット)がありますが、それを見ると位置関係が一覧できます。※オレンジ色の枠に白文字が世界遺産です。
そして、この「奈良公園ウォークマップ」の表面を見ると、8つのうち5つが徒歩圏内にあり、ウォーキングで回れない距離でもない、ということに驚きます。
それではこれから、奈良の世界遺産について、それぞれを見ていきましょう。
東大寺のアクセスや駐車場
奈良の世界遺産を構成する、東大寺は、もともと728年に聖武天皇が亡くなった子供の供養のため建立した山房が前身で、その後、有名な大仏を擁する大寺院となりました。華厳宗の大本山でもあります。
最寄り駅からのアクセスとしては
●JR大和路線・近鉄奈良線「奈良駅」→市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車→徒歩5分
がメインですが、近鉄奈良駅から約20分歩いてもアクセスできます。またJR奈良駅からも距離的には約2.6キロくらいですから30分程度歩くつもりならば徒歩でのアクセスも可能です。
途中、通り抜ける奈良公園では鹿が放し飼いされており、はじめての人はちょっとびっくりするかもしれません。
自家用車やレンタカー利用の場合ですが、東大寺は直営の駐車場をもっていません。南大門のすぐ目の前に、県営南大門前駐車場があるのですが、こちらは行楽シーズンには観光バス専用となり、一般車両の利用はできないこともあります。
なので、東大寺へ車でアクセスした場合、周辺の民間駐車場を利用することになります。たとえば、「三井のリパーク 今小路」からは徒歩5分、「タイムズ東大寺転害門西」からは徒歩10分と、観光にも便利な場所にあります。
奈良エリアで最安値を検索すると、たとえば「若草山頂駐車場」がヒットします。駐車料金無料がメリットですが、東大寺まで徒歩50分くらいかかり、奈良の世界遺産めぐりには少々不便そうです。
東大寺の見どころとしては、大仏殿、法華堂、戒壇堂、そして東大寺ミュージアムがあります。
それぞれの拝観時間と料金は以下になります。
項目・時期・拝観時間 | 4~10月 | 11~3月 |
大仏殿・法華堂(三月堂)・戒壇堂 | 7:30~17:30 | 8:00~17:00 |
東大寺ミュージアム | 9:30~17:30 (最終入館17:00) | 9:30~17:00 (最終入館16:30) |
個人 | 団体(30名以上) | |
大人(大学生以上) | 600円 | 550円 |
高校生 | 600円 | 500円 |
中学生 | 600円 | 400円 |
小学生 | 300円 | 200円 |
大仏殿・法華堂・戒壇堂、東大寺ミュージアム、それぞれで拝観料がかかります。また大仏殿と東大寺ミュージアムのセット券の場合、大人が1000円、小学生が400円となっています。
春日大社の見どころや京都・大阪からのアクセス
春日大社は奈良公園・春日山原始林エリアにあり、東大寺の南東方向に直線距離で約600メートル程度、なので東大寺からそのまま歩いてアクセスできます。
京都・大阪からのアクセスルートでいうと近鉄線が便利で、京都からは近鉄京都線で約48分、大阪の難波駅からは近鉄奈良線で約38分で、近鉄奈良駅へ到着します。
春日大社をめざし、京都・大阪から近鉄奈良駅へ着いたら、奈良交通バスの路線バスへ乗り換えます。バスは「春日大社本殿」行きに8分ほど乗り、終点からすぐの場所です。
春日大社へ車でアクセスする際、大阪からは、阪神高速13号線や第二阪奈道路を経由して、国道308号、県道1号線を進みます。京都からは、阪神高速8号線、京阪和自動車道の木津ICで降りて進むのが王道です。春日大社には、100台とめられる有料駐車場があります。
奈良といえばお寺、のイメージがあるかもしれませんが、春日大社は神社です。そのの見どころとしては、巨大な一之鳥居、重要文化財の南門、美しい朱色の本殿、3000基にも及ぶ燈籠などが挙げられます。
奈良公園にいる鹿とも縁が深く、実は、鹿は春日大社の神の使いなのです。「神様が鹿に乗ってやってきた」という言い伝えがあり、手洗い水も鹿を象った「伏鹿手水所」も有名です。なお、奈良公園の鹿に専用のお煎餅を買って与えるというシーンもポピュラーですが、神の使いはなかなかアグレッシブなので、小さな子どもや女性は注意したほうがよいでしょう。
興福寺の見どころは国宝館の阿修羅像
奈良の世界遺産を構成する、興福寺には「東金堂」「五重塔」「三重塔」「中金堂」「南大門跡」「南円堂」「猿沢池」などのスポットがありますが、国宝館に展示されている阿修羅像が一番の見どころとも言えるでしょう。阿修羅像は興福寺のシンボルとして定着しており、仏像ファン憧れの的でもあります。三面六臂の美少年をモデルにしたようなイケメンぶりが、とくに女性に人気です。
像高は153.4cmと意外と大ぶりな仏像であり、奈良の天平期の734年に制作されたと伝えられ、いまも見る者に感動を与え続けています。
場所は東大寺の隣に位置し、近鉄奈良駅より徒歩圏です。興福寺・国宝館の拝観時間は9時〜17時で、拝観料一覧表は以下になります。
大人・大学生 | 中高生 | 小学生 | |
---|---|---|---|
個人 | 700円 | 600円 | 300円 |
団体30名以上 | 600円 | 500円 | 200円 |
身障者 | 350円 | 300円 | 150円 |
興福寺の国宝館は、リニューアル工事で閉館となっていた時期があります。
阿修羅像の処遇を心配する声もあったようですが、2018年1月にリニューアルオープンし、国宝館は再び仏像ファンでにぎわっています。
薬師寺へのアクセスや見どころ
薬師寺と唐招提寺は、奈良の世界遺産でも郊外エリアにありますが、アクセスは意外と簡単で、電車が主要な移動手段となります。
近鉄奈良駅から、近鉄大和西大寺で近鉄橿原線に乗り換え、西ノ京駅で下車すれば、薬師寺はそのすぐの目の前にあります(徒歩5分)。
他にも薬師寺は、近鉄奈良駅から奈良交通バスの路線バスでアクセスする方法もあります。近鉄奈良駅からは、奈良交通バスの「六条山行き」に乗り、所要時間22分くらいで到着です。これも観光客にも人気のアクセスルートです。奈良市内からタクシーを利用すると、たとえば近鉄奈良駅からは所要時間15〜20分、料金は3000円以内が目安となります。
自家用車やレンタカーでアクセスするならば、100台とめられる有料駐車場(乗用車は500円)が利用できます。
薬師寺の見どころとしては、やはり国宝の薬師三尊像や聖観音菩薩立像は外せません。さらに、玄奘三蔵院伽藍にある平山郁夫画伯作の壁画に感動したという人もいます。
そして建造物としては中央のそびえる金堂、そしいその左右にそびえる東塔と西塔が目立ちます。この三重塔はこのエリアのシンボル的存在ですが、特に国宝の東塔は薬師寺で創建当時より現存している唯一の建物で、1300年を生き残った存在感は独特です。
薬師寺の拝観料金ですが一覧表が以下になります。
大人・大学生 | 高校生 | 中学生 | 小学生 | |
個 人 | 600円 | 400円 | 400円 | 200円 |
団 体 | 480円 | 320円 | 320円 | 160円 |
唐招提寺の公開された鑑真像
奈良の世界遺産を構成する唐招提寺は、西ノ京の薬師寺にほど近い場所にあります。南都六宗の一つである律宗の総本山ですが、もともとは鑑真大和上が戒律を学ぶ人のために開設した道場で、「唐律招提」と呼ばれる私寺でした。
見どころのひとつとしては、唐招提寺の開山堂にある「鑑真和上お身代わり像」があります。御影堂にある国宝「鑑真和上坐像」を忠実に模したもので、要はレプリカなのですが期間限定で公開されるや、観光客が殺到するといいます。唐招提寺の鑑真和上お身代わり像は、2013年の鑑真和上1250年御諱(回忌)の記念に制作された像です。公開期間は、例年6月5〜7日ですが、変更されることもあるので、ホームページなどで確認するのがおすすめです。
オリジナルの至宝・鑑真和上坐像は、日本最古の肖像彫刻と言われ、国宝に指定されています。期間限定で一般公開されるのはレプリカのほうですが、オリジナルと瓜二つの完成度の高さは圧巻で、公開期間中はガラス越しに鑑賞できます。
薬師寺の拝観料金ですが、玄奘三蔵院伽藍が公開されているか、非公開により拝観料が変わります。一覧表は以下です。
玄奘三蔵院伽藍 公開時 | 玄奘三蔵院伽藍 非公開時 | ||
拝観可能場所 | 白鳳伽藍 玄奘三蔵院伽藍 | 白鳳伽藍のみ | |
対象期間 | お正月 1/1~1/15 春季 3/1~6/30 お盆 8/13~8/15 秋季 9/16~11/30 | 左記以外の期間 | |
大人 | 個人 | 1,100円 | 800円 |
団体(25名以上) | 1,000円 | 720円 | |
中高生 | 個人 | 700円 | 500円 |
団体(25名以上) | 630円 | 450円 | |
小学生 | 個人 | 300円 | 200円 |
団体(25名以上) | 270円 | 180円 |
平城宮跡の見どころとアクセス
奈良の世界遺産を構成する、平城宮跡ですが、8世紀のまさに「日本の中心街」だったはずです。
現在ではむしろ郊外となり、近鉄奈良線の電車でアクセスするのが常道です。最寄り駅は近鉄奈良線・西大寺駅で、駅からの所要時間は徒歩10分くらいです。
平城宮跡は、車でアクセスする人も多いものです。車での来場者には、平城宮跡資料館、造酒司の井戸などの近くにある駐車場が利用できます。
平城宮跡は、奈良市内からタクシーでアクセスする方法もあります。近鉄奈良駅あたりからの所要時間は約15分、料金は2000円以内が目安となります。
また、唐招提寺や薬師寺がわりと近い場所にあるので、観光タクシーを利用して運転手の解説付きで回るのもおすすめです。
もともと広大だった平城宮の跡地なので広々とした緑地が印象的。そこに朱雀門や東院庭園などが復元されて建てられており、平城宮跡資料館、遺構展示館では、多くのの出土品の展示や遺構が発掘されてたままの状態で公開されています。こちらの入場料は無料になっています。
法隆寺へのアクセスや見どころ
世界遺産の法隆寺は、奈良の郊外・斑鳩(いかるが)エリアにあります。
薬師寺からだと、さらに南西方向へ直線で約4キロほどのいち関係になります。電車・バスで行く場合、ますJR奈良駅から大和路線(関西本線)に乗車します。約11分でJR法隆寺駅に着き、駅からは奈良交通バス「法隆寺門前」行きに乗ります。駅からバスの所要時間は、10分弱でアクセスできます。JR法隆寺駅からは徒歩でも約20分ほどでアクセスできます。
法隆寺は、JR・近鉄の奈良駅から、路線バス1本で直接アクセスする方法もあります。所要時間は、JR奈良駅から1時間超が目安となりますが、わかりやすさで観光客に人気のルートです。
大阪方面から車でアクセスするには、西名阪自動車道を利用し、法隆寺ICで降りるとよいでしょう。ICからは、大和高田斑鳩線、国道25号線を約3km走らせれば到着で、五重塔が格好の目印となるでしょう。
法隆寺は、聖徳太子が住んだ場所に建てられた斑鳩寺がその始まりと言われており、当時の寺院のフォーマットを典型的に伝える寺であると同時に、五重塔など、19棟の国宝と、50以上の重要文化財を擁する奇跡のような仏教施設です。見どころとしては、現存する世界最古の木造建築物である金堂のある西院伽藍は見逃せません。それと並ぶ五重塔も日本に現存する最古の五重塔で、もともと仏舎利(お釈迦様の遺骨)を納めるための建造物です。
また、各施設に展示されたさまざまな仏像や文化財(ほとんどが国宝か重要文化財)のひとつひとつもすべからく見る価値があります。そして、左右非対称ながらも美しいバランスを感じさせる回廊やすべての建造物の配置は、いろいろな角度からどこを見ても「絵になる」構図も多くの人が心奪われるところです。
拝観料金は、一般で15,00円、小学生が750円となっており、拝観時間は、2月22日から11月3日の期間は8時〜17時、それ以外の期間は8時〜16時半となっています。
吉野山の世界遺産登録対象とアクセス
吉野山は奈良県でも南部にある山稜で、古くから「吉野の桜」といわれるように桜の名所として知られ、国の「名勝・史跡」「国立公園」に指定されています。
修験道の本山である金峯山寺があり、山岳信仰の聖地でもあり、吉野・大峯の霊場は、高野山と熊野三山(和歌山県)の霊場を結ぶ巡礼路とともに「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産登録されています。
登録対象
【吉野・大峰】・吉野山・吉野水分神社・金峰神社・金峯山寺・吉水神社・大峰山寺
【熊野三山】・熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社・青岸渡寺・那智大滝・那智原始林・補陀洛山寺
【高野山】・丹生都比売神社・金剛峯寺・慈尊院・丹生官省符神社
【参詣道】・大峯奥駈道・熊野参詣道・高野参詣道
アクセスには、観光客には電車・ロープウェイを使うのがわかりやいでしょう。まずは電車で、近鉄の橿原神宮前駅から特急に乗り、所要時間40分ほどで吉野駅へ到着します。
近鉄の吉野駅からは2分ほど歩き、吉野ロープウェイの吉野千本口駅へ着きます。そこで吉野ロープウェイに乗車し、約3分で吉野山駅へアクセスするのが王道となっています。
吉野山へ車でアクセスするには、南阪奈道路を利用して葛城ICで降ります。さらに、国道165号・169号線を30kmほど走らせると到着です。現地では、吉野山観光駐車場があり、如意輪寺駐車場のほうは参拝者限定です。桜の時期は、臨時の有料駐車場が設けられます。